ゲンゴ道断

今回は出したあと「ああ、学生時代にもっとちゃんと勉強しておけばよかったなぁ」と思わされてしまった「クイズ」でござんした。では問題のおさらい。

Q.たとえば「今日の昼食に僕はハンバーグを食べるけど、君は何を食べる?」という質問に対する「私はカレーだ(≠I am a curry and rice)」や、「このバスは新宿行きのバスだけれど、あのバスはどこ行きかな?」という質問に対する「あのバスは渋谷だ(≠That bus is Shibuya)」などのように、文字通りに解釈すると異なる意味になってしまう、述語部分を省略した「AはBだ」という形の文のことを、ある魚の名前を使って何というでしょう?

正解は……「うなぎ文」でした! ということでshevaさんお見事。pontevecchioさんやnoda-shuさんが指摘されているように、大学で言語学をやられた方にとっては超メジャーな用語だったようですね(お2人がそちら方面を専攻されていたことは存じませんでしたが)。ちょぼくさい問題を出してしまいました。日本文学科卒の癖につい最近まで知らなかった自分の不明を恥じなければ。そして別段そちら方面を専攻されていたわけではないshevaさんは素晴らしいですね。パチパチパチパチ。
shevaさんは何で「うなぎ文」というかの理由は知らない、とのことでしたがちゃんと理由があります(pontevecchioさんやnoda-shuさんはご存知でしょうか)。昭和30年に金田一春彦*1が論文『日本語』(研究社『世界言語概説 下』、岩波新書『日本語』所収)の中で述べた、「“君ワ何オ食ベル?”に対して“ボクハウナギヲ食ウ”と答へる代りに“ボクハウナギダ”」ということによって「ボクハウナギヲ食ウ」の意味を表す、というくだりがありまして、のちに奥津敬一郎が『「ボクハ ウナギダ」の文法』(くろしお出版)の中で述べたことによって「うなぎ文」という言葉が有名になったようです。金田一春彦がたまたまウナギを例に出したからこんなことになっちゃったんですね。もしも彼が出した例文如何によっては「カツカレー文」とか「オムハヤシ文」とか「広東風あんかけチャーハン文」とかになって、言語学の教科書はちょっと美味しそうなことになっていたかもしれない訳ですよ。もう昼前の2限なんてヨダレとか出ちゃって大変! ウヒョーってな具合に。
そんなわけで「提唱者は金田一春彦命名者は奥津敬一郎」ということになるんでしょうかね。このへん、もうちょっと調べないとよくわかりませんが(pontevecchioさんやnoda-shuさん、もしおかしな点がありましたらツッコミをよろしく)。
ではあっさり答えられたのでおまけQを。

Q.以下は、金田一秀穂のエッセイ『金田一家をめぐる誤解』(『文藝春秋平成17年3月臨時増刊号「言葉の力」』所収)からの引用です。
「初対面で自己紹介をさせられるときも、あまりいい気持ちがしない。『キンダイチです』と言うと、たいていの場合、相手は『あのキンダイチさんですか』と聞いてくる。「はあ。まあ」と曖昧に言うと、『やっぱりご親戚の……』などと言ってくる。「あ。はい、次男です」と言うと、「お父様はあの……」と言うから、『はい、(  )をしています』と答える。これが田中や鈴木であれば、こんなことにはならないだろう」
(  )に当てはまる言葉は何?

今度も簡単でしたかね。さすがに大学で習ったって人はいないでしょうけれど。よろしかったら答えてみて下さい。



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*1:念のために書いておきますが、秀穂の父。