酸っぱい葡萄

美味しそうな葡萄があった。食べたかったけれど、高いところに生っていて、手が届かないと思った。
だから、その葡萄の木の根元を私は一生懸命掘ってみた。自分の小さな手では、少しずつ、少しずつしか掘れなかったけれど、妖しく綺麗な艶を帯びた、その美味しそうな小さい葡萄は少しずつ、少しずつ私のいる地面に近づいてきた。近づいてきたような気がした。
そして、もう手を伸ばせば届く、というところに来た葡萄に私はやっと手をかけ、歯を立ててみた。
葡萄はとても酸っぱく、食べられなかった。
どうせ酸っぱい葡萄なら、届かないままでいたほうがよかったのに。
「あんな葡萄、酸っぱいに決まっているさ」と、下から見上げて嘯いていられればよかったのに。
舌にざらつくように、酸っぱさがいつまでも残った。いろいろなことが、もうどうでもよくなってしまった。



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