生きる力

いまから8年ほど前のこと。私の大学の一年先輩(女性)の話である。
彼女が卒論の提出日に学校に行くと、提出窓口の前で何人かの友達が蒼い顔で立っている。
「おはよう、どうしたのー?」
先輩が軽い口調で挨拶をすると、その友達は泣きそうな顔で言った。
「○○(←先輩の名前)、何してたの? もう提出時間過ぎちゃったよ!
「え、ウソ?」
彼女は提出の期限をきっちり1時間、間違えていた。余裕を持って、〆切の30分前に学校に着いたつもりが、実際は30分後だった、というわけだ。
卒論を出したことがある方はおわかりだろうが、あれは提出の期限を1分でも過ぎると受理してはもらえない。
「ど、どうしよう?」
先輩も、ここに至って事態の重大さを把握したようだ。すると、友達が助け舟を出した。
「なんか、京王線が事故で遅れてるんだって。だから、○○も京王線に乗ってきたってことにしちゃいなよ」
天佑とはこのことである。先輩は藁にもすがる思いで窓口に行って事務員に「あのー、卒論の提出を…」と声をかけた。
事務「電車の遅延ですか?」
先輩「は、はい。そうです」(なぜか遅延証明の提出は求められなかったらしい)
事務「じゃあ、学生証見せてください」
先輩「はい」
学生証の裏面には、学生の住所が書いてある。
事務「あら、あなた埼玉じゃない? なんで京王線で遅れたの?」
京王線と彼女の自宅はまるで反対方向なのだ。もはや万事休す、絶体絶命の大ピンチ。しかし彼女は、とっさに機転を利かしてこう言った。
先輩「家は埼玉なんですけど、京王線沿線の友達の家でプリントアウトしてたんです
無事、彼女は提出を認められ、卒業できた。


新学習指導要領に盛り込まれたが、「わかりにくい」とあまり評判がよくない「生きる力」だが、私はこういう先輩のような例が本当の「生きる力」だろうと信じて疑わない。




その教訓を活かし、私は自分の提出の時は1時間前に行った。人気blogランキング