トラスト・オーバー・サーティ

ムーンライダーズのアルバムに、『DON'T TRUST OVER THIRTY』という作品があります。「30歳以上を信じるな」。日本語ロックの最高峰といわれる名盤です。聴いたことないんだけど。
30歳以上を信じるな。実にロックなフレーズです。このタイトル自体が、日本のロックシーンに与えた影響というのは少なくないのではありますまいか。まぁ聴いたことないんだけど。
確かに、30歳以上を信じるな、というフレーズはかっこいいです。そんな年寄りになっちまったら、もう終わりだぜ。少なくとも一つの区切りだぜ。だから、ドント・トラスト・オーバー・サーティ。でも聴いたことないんだけど。
さて、私が愛してやまないバンド・スキップカウズに『トラスト・オーバー・サーティ』というアルバムがあります。

トラスト オーバー30
言うまでもなく、ムーンライダーズの作品をもじったタイトルです。
全曲作詞を務めたヴォーカルのイマヤスは、このアルバムのリリースに際して、こう語っています。
http://www.prhythm.jp/skipcows/discography/30.html

ロックの名言をずっと信じていた。ドントトラストオーバーサーティ 30才以上を信じるな! 宝島(今のではない)少年だったオレ。セックスピストルズに衝撃を受けてちょっと髪の毛をデップで固めていたあの頃、修学旅行の記念撮影で思わず中指を立ててちょっとベロ出しちゃったりしてた頃、斜めに構えちゃってた頃、大人は判ってくれないなんて思ってた頃、満員電車になんか乗らないぜなんてありきたりの詞を書いていた頃、そんな青臭い頃、自分が30歳を越えるなんて全然思っていなかった…まったくもって恥ずかしい。高校生からバンドを初めて、何をやっても続かないイイ加減な人間が今までバンドだけは続けている。
宣言しよう! オレは当たり前だがわかっていなかった。多分、これからもいろんな間違いをくり返しながらきっと年をとって生きていくのだと思う。10代の頃あんだけ嫌だった30代になる事がなってみると悪いもんじゃない事に気が付いた。逆に10代の頃の甘い自分に腹が立つのである。わかってなかった…継続は力なりのことわざの意味も、そして斜めに構えて格好をつけている事の格好悪さも…だからこそ私達スキップカウズは新たな提案をしたい! ドントをとる! つまりトラストオーバーサーティと! 30歳以上を信じろ! と。この酸いも甘いも知った年代を信じろ! と! だってオレは10代より少なくとも成長した。もう満員電車にゆられる人達のえらさも知っている。そして一番に好きな事を続けて行く事がどんなに難しいか知っている。さぁ30歳以上の皆様方、今こそ立ち上がれ! 家庭が大事でいいじゃない。乱れた生活じゃなくてもいい。ロックに形はいらない。そっちの方が面白い。若い者にコビなんて売らず、ガンコな大人になろう! そして経験をフルに生かし、出っぱってきた腹だけはひっこめてこれからを生きていこう! …なんつって!!

今日、30歳になりました。予想したとおりではありましたが、30歳になったって、何も変わっちゃいません。前にも書いたように、20代が終わってしまう/終わってしまったことについては、ハンパない哀しさや感慨を感じましたし、いまもちょっとだけ後ろ髪ひかれるような思いはあります。でも、だからといって私はといえば相変わらずアホですし、10代の頃に夢中になってやっていたものと(当時と関わり方は違っても)まだ関わって生きています。哀しいくらい、そして笑っちゃうくらい何にも変わっていません。30歳のいまになったって、まだ某グループ(それが何かは言えませんが)を追っかけていますし、しょーもない夢(それが何かは言えませんが)も追っかけたりしています。威張って言うこっちゃありませんが、まぁ卑下するほどでもないんではないかな、とも思います。
10年前の自分は、「30歳」の自分について、漠然と「妻がいて、子もいて、会社では部下の一人もいるんだろうな」と想像していましたが、10年後のいま、そのどれもいません。それどころか結婚してませんし、会社に勤めてもいません。思い描いていたイメージとはだいぶかけ離れた30歳になっちゃいましたが、そのかけ離れていく軌跡は、すべて納得ずくでした。「ああ、いま俺、こうなっちゃってってるわ」と自分で思いながら、紆余曲折を経ていまの30歳に着地しました。現在地はベストではないかもしれないけれど、そう悪いもんでもない、と実感として思います。なぜなら、結局それは自分で選び取ってきたものですから。
今日から、30代です。世間的にはもう完全に「オトナ」扱いされる年代ですが、だからといってヘンに反発してトガったりすることなく、かといってヘンに訳知り顔で分別くさくなることもなく、私は私のまま、変わらず、いけるところまでいきたいと思います。トラスト・オーバー・サーティ。そんなわけで皆様、これからもこんな一斗をよろしくお願いいたします。
イマヤスは、こんなことも語っています。
http://keytalk.jp/unga/unga_90/vol90_p6.html

俺はね、反抗することがロックだと思うのは非常に嫌。そうじゃなく、自分の好きなことをやり続けてることの方がロックだと思うんですね。


10年後の自分が、「トラスト・オーバー・フォーティ」と言えていますよう。人気blogランキング