うわー、逃げろー! 茶太の妄想が始まったぞー!

私も、人並み(かどうかは知らないが)に女性とお付き合いした経験があるので、世間的にデートと呼ばれるような行為をしたことがあるにはある。
しかし、残念なことに私の高校は男子校であったし、中学時代はクイズなんかやってるイタい子だったので、いちばん魂が柔らかな中・高生のときに、女性とそういうデート的なことをしたことがないのである。当時そういう経験がなかったことについて、後悔していないでもないが、別に今更どうだっていい。ただ「そういえば、そういうことができなかったなぁ」と思うだけである。
で、そういう魂がやわらかな時期に経験すべきだったデート、したかったデートというものが私の中ではある。文化系人間なものだから、私のサッカー部の部活が終わるまで待っててもらって、夕暮れの帰り道を…(我ながら、考えることがベタなうえに古くさい)なんてなことは逆立ちしてもムリだ。私の中での中・高生時代の憧れのデート、それは「美術館・図書館」である。基本的に、その年頃の男子は自分のフィールドに女子を連れ込みたがりがちである。自分が相手に対して優位に立てるからだ。私の場合、そのフィールドが「美術館」であり、「図書館」だったのである。
一緒に来てくれる女の子はもちろん、おとなしく物静かな文化系女子だ。あえてKingTowerさんだけに向けて書くと、『スウィング・ガールズ』の本仮屋ユイカみたいな子だ。眼鏡だ。ショートカットだ。ヒャッホーゥ!
美術館や図書館の何がいいかといって、どちらも静粛が要求される場所である以上、小声で話さねばならず、ということは必然的に顔と顔が近づくってことなんですよコンチクショウ! よい。これである、私の青春にかけていたものは。そして美術館や図書館では、やはりクイズくんの私としては、文化系知識で女の子に優位に立ちたい。うんちくの一つや百もかまして、知的な人と思われたい。ひとまず美術館。「クールベは、徹底した写実主義だったんだ。見たものを見たままに描いたんだよ。だから彼は『私は天使を見たことがない。だから天使は描かない』という有名な言葉を残しているんだ」と囁く私。「一斗くんて何でも知ってるのね」的な尊敬を帯びた潤んだ目で私を見つめるユイカ(仮名)。「見たことないから天使は描かない、か…。一斗くんは、天使って見たことある?」と小声で訊くユイカ(仮名)。私は答える。「…いま俺、天使と喋ってるよ」。あっまーい!!!!!! 甘いよ一斗さん、練乳混ぜたバニラシェイクぐらい甘いよ一斗さーん(スピードワゴン風)。
一方、図書館である。放課後に2人で、もくもくと勉強かなんかをするわけだ。翳り始めた日が、ノートに窓の外のプラタナスの枝の影を落とす。そんな頃を見計らって、「悪いけど、書架から『マルテの手記』を取ってきてくれない?」とユイカ(仮名)に頼む私。「マルテ?」。「『マルテの手記』だよ。リルケの」。少し訝りながらも席を立って取りに行ってくれるユイカ(仮名)。手にして戻ってくる途中、紙片が本に挟んであることに気付くユイカ(仮名)。その『マルテの手記』の中には、私が予め挟んでおいた「ユイカ(仮名)のことが、好きです」と一行だけ書かれた紙が…。あっまーい!!!!!! あんまり親しくないクラスメートからもらったベルギー土産の変なチョコみたいに甘いよ一斗さーん(再びスピードワゴン風)。
とまぁ、こんな具合のプレイができるお店があったら金は出す。結構出す。目的はいやらしいことではなく私の憧れのデートの成就なので、上記のようなことさえできればOKである。ないだろうか、そんなお店。『タウンぺージ』に載ってないかしら。どういう業種で検索すればいいのかわからないけど。