酒と泪とおしべとめしべ
みうらじゅん『正しい保健体育』 。みうらじゅんは、私の中で「会ってみたいサブカル系有名人四天王」のうち、唯一まだお会いする機会のない1人である*1。伊集院光との共著『D.T』(名著)や、『新「親孝行術」』 など、家族や性、人生などに関する著作や発言がここのところ目立っていたが、そこにきて、この『正しい保健体育』である。理論社の「よりみちパン!セ」新書シリーズだが、装丁・挿絵・体裁等がすべて、本物の保健体育教科書のパロディになっているのが面白い。違うところといえば、本物の教科書にはまず出てこない「ちんぽ」とか「性豪」とか「ずるむけ」という言葉が頻出するところだろうか*2。
ただ、徹頭徹尾デタラメな内容というわけではないところが油断ならない。実は保健体育という教科は、人が生き物として、それも高度に社会的な生き物としてどのように生きていくのか、ということを考える、何気に重要な教科であり、その中で健康についての考え方を学ぶ*3のだが、本書の中で、みうらじゅんは健康の考え方についてこう述べている。
それでもなぜ、健康診断を受けなくてはならないか。それは「大切な人のために」なのです。
大切な人のためにやるべきことでもっとも大事なことは、「その人よりも長生きをする」です。(中略)
大切な人ができたら、その人より1日、1時間でも長く生きていなくてはなりません。
明快だ。健康で長寿するということは、決して自分のためだけではない。こういう本質的なことはすべからく学校で教えるべきだ、と個人的には思う。他人を大事にしたいから自分を大事にするし、自分を大事にしたいから他人も大事にするのだ。そんな、教えなくてはならないことがこの本にはある。「顔射」とか「調教」など、教えなくていいことも詰まっているけれど。