乱読抄

ツァイガルニクの南天

一度だけ本当の恋がありまして南天の実が知っております 山崎方代の歌集『こおろぎ』より。 山崎方代という歌人を私はあまりよく知らなかった。小説家の山川方夫*1と字面が似ているので、混同して「山川方夫って、歌も詠んでいたのか」と思ったぐらいの知識…

『考証要集』

どこかのサイトで存在を知り、脊髄反射的にAmazonで注文した『考証要集』(大森洋平。文春文庫)。NHKで、ドラマや歴史ドキュメンタリーの時代考証を担当する著者が、NHK職員向けに書いた資料が底本となっている。もともとはプロユースの内部資料であるが、…

ドラマ『流星ワゴン』

先週から、TBSで連ドラ『流星ワゴン』が始まった。今夜が第2話。初回は2HSPだったので、録画しておいて一昨日見たが、面白かった。視聴率は11%ぐらいだったとのことで、今後の上昇を期待したい。しかし、開始5分以内で『半沢直樹』に出てた俳優・女優が3…

『辞書を編む』

年末年始に読んだ本の一つ。 著者は、「三国」こと『三省堂国語辞典』の編纂者、飯間浩明。最近、某TV番組の失礼な取材の実態をTwitterで明らかにしたことでも話題になった方である*1 書名からわかるように、三浦しをんの『舟を編む』 の映画公開に合わせて…

お見舞い申し上げます

フィリピンの台風被害のニュースをやっているが、「レイテ島」とか「タクロバン」という地名を目にすると、どうしても大岡昇平の『俘虜記』を思い出してしまう。 読んだの、17〜18年前だけどな。「タクロバンの雨」とか。 ちなみに『野火』と『レイテ戦記』…

後出しジャンケンにならないように

あす、日本時間の20時前後ぐらいにノーベル文学賞の発表がありますが、それに先立って宣言しておきます。 もし、今年の受賞者が村上春樹でなかったら、このブログの更新をやめます。 うわ、なんだ、この(私も含めて)「誰も損しない感」。まぁこちらをご覧…

やっちまった・・・

某漫画の新刊を買いに行き、間違えてもう持っている既刊を買ってきてしまうという痛恨の一撃。それも、家に帰って読むまで気がつかないというね。しかも二度目というね(『ちはやふる』でも一度、既読の既刊を買ってしまったことがある)。 中高生の頃みたい…

『たべもの世相史・東京』

二年ほど前、ロフトプラスワンで開催された、唐沢俊一さん*1の蔵書即売会(もう、行けども行けどもグッとくる本がザクザクだった)でゲット。何冊かまとめていくらだったから、この本に唐沢さんがつけた値段はわからないが、「ほぉ、なかなかお目が高い」と…

やさしいことば、やさしいひと

ちょっと前に読んだ、竹内政明『名文どろぼう』からの孫引き。 読売新聞の一面コラム「編集手帳」の第6代目執筆者である著書が、古今の名文を多数紹介している。「人の褌で相撲」本だが、軽く、面白く読めた。 その中から、山口瞳『木槿の花』の、武者小路…

本は意外と適当に書ける

佐藤愛子『今は昔のこんなこと』 私の中の、「存命だったかどうか、ついうっかり忘れてしまう作家ランキング」で8年連続首位を守っている佐藤愛子であるが、その佐藤愛子が、「居候」や「モダンガール」、「アッパッパ」など、いまは失われてしまったものや…

『送り火』

重松清の短編集。連作ではなく、それぞれの話は独立しているのだが、すべて「武蔵電鉄」という架空の(しかし、作者自身がかつて住んでいた路線がモデルである)私鉄沿線が舞台となっている*1。 彼のモチーフとなっている「現代の『家族』」というテーマは、…

赤塚不二夫、死去

私は、「セックス」という言葉を、赤塚不二夫の漫画で初めて知った。 もちろん私は、『天才バカボン』も『おそ松くん』も『もーれつア太郎』も『レッツラ☆ゴン』も、リアルタイムで読んだ世代ではない。しかし、「ギャグ漫画家・赤塚不二夫」という名前は、…

『A型人間の頭の中』

たまたま、書店で見つけて手に取った(買ってはいない…(汗))。基本的に私は血液型性格判断の本というものは信用していない。いないのだけれど、これは血液型×星座で48パターンに性格を分類していて、なかなか驚かされてしまった。 以下、私に該当する「A…

小谷野敦『恋愛の昭和史』

『文學界』に連載されていた「昭和恋愛思想史」を単行本化したものの文庫化。小谷野敦は『もてない男』が話題になったときから気になっていたのだけれど、今回初めて読んでみた。文学やTVドラマ、歌謡曲なども援用しつつ、日本近代における「恋愛」思想を明…

『日本人へ 私が伝え残したいこと』

今日、買いました。まだ全部は読んでませんが。 http://www.bunshun.co.jp/mag/special/index.htm 文藝春秋SPECIALはときどき買っているのですが、今回も「昭和史・かかる日本人ありき」(「タイガー・モリ」こと森寅雄、夢野久作の息子・杉山龍丸に関するエ…

今日の詩

山之口獏『鮪と鰯』 鮪の刺身を食いたくなったと 人間みたいなことを女房が言った 言われてみるとついぼくも人間めいて 鮪の刺身を夢みかけるのだが 死んでもよければ勝手に食えと ぼくは腹だちまぎれに言ったのだ 女房はぷいと横にむいてしまったのだが 亭…

『大予言』

藤子・F・不二雄のSF短編。ひさしぶりに読み返した。 作品の終盤。エネルギー危機、直下型大地震の危機、核拡散の危機、食糧問題の危機などを報じる新聞記事の切り抜きを手にした予言者・田呂都は、泣き叫ぶ。 ひょうしぬけしたような顔だな やっぱり。それ…

あの事件で思い出した小説

中島敦『山月記』。 若くして科挙に合格したエリートでありながら、官吏として、そして詩人としてと、度重なる挫折を味わった李徴。狷介で峻峭な性格の彼は、孤独の中で傷ついた自尊心を抱え、また生活の逼迫という焦燥に苛まれ、ある日ついに虎になってしま…

一年近くぶりの解答

昨年、こんなエントリを書いたのですが。 http://d.hatena.ne.jp/Chatterton/20070706/p2 都市伝説的に言われている、「Hのとき、女性がイくと男の子が生まれる」というお話。真偽不明ながら、割と有名な説だったりするようですが、これの根拠(?)らしき…

明治の食卓

河内一郎『漱石、ジャムを舐める』。 労作。第一部「作品に見る食文化史」では、漱石の作品に登場する食物・食品から明治の食生活や、夏目家の食卓の様子をあぶり出しており面白い。『吾輩は猫である』の中で、苦沙弥先生が舐めていたジャム*1を、当時の生産…

『ニシノユキヒコの恋と冒険』

ニシノユキヒコという、「姿よしセックスよし。女には一も二もなく優しく、懲りることを知らない」男を、彼と交情があった10人の女性が回想して語る、という形式の連作短編集。「どうしようもないろくでなし」で女たらしながら、最後には必ず女性に去られて…

『短歌パラダイス』

読んだ。面白かったんで一気に読んだ。諸事情で新刊なのに9割引で買えたけどじっくり読んだ。 ちょっと穂村弘の歌集をちゃんと読んでみようと思った。 んで、あと私もちゃ……いや、やっぱなんでもない。 たくさんのノブが光れる夜の廊下ノブだつたのだ君の寡…

『ジェイムス・ジョイスを読んだ猫』

人から高橋源一郎の本をもらったら、サイン本だった。 これが本当に彼のサインかどうかには一抹の疑問もあるのだけれど(私にこの本をくれた人も、別の他人からもらったから詳しい経緯は知らないらしい)。 87.10.15の日付が入っている。20年以上前か。この…

『水滴』

沖縄出身の作家・目取真俊の芥川賞受賞作。 ある日突然右足が腫れて、そこから水滴があふれ出す老人・徳正。彼の寝室には、足から出る水を飲みに、沖縄戦で戦死した日本兵たちの亡霊が夜な夜な現れるというストーリー。罪と秘密を抱えて戦後五十年を生きてき…

学問のすゝめ

先日、『旧制中学入試問題集』という本を買った、というエントリを書きましたが。 http://d.hatena.ne.jp/Chatterton/20070926 読んでみて、いろいろと面白い入試問題を発見したのですよ。算術の問題で軍艦の長さをメートル法から尺貫法に換算させたり、地理…

最近、初めて知ったこと

作家の ・柴田よしき ・桜庭一樹 ・有川浩 がいずれも女性だということ。 上記の作家の作品はひとつも読んだことないんだけど、ふつうは字面で男だと思うよね。 もしかしたら『となり町戦争』(これは読んだけど)の三崎亜記も女性だったりしないだろうか。…

今日買った本

武藤康史『旧制中学入試問題集』。 これは面白い。まだ読み始めたばっかなんだけど。明治の後半から昭和初期までの、全国の旧制中学や高等女学校、陸軍幼年学校などの入試問題を、国語、算術、歴史・地理、理科といった科目ごとに、年代順に紹介して解説も付…

Synchronicity

今日、移動中の電車内で、本を読んでたんですけどね。 私の隣に座っていた、高校生とおぼしき女の子も何やら本を読んでいる様子で。ふと、何気なくチラ見したら、そのとき私が読んでいたものとまったく同じ本を読んでいました。伊坂幸太郎の『重力ピエロ』。…

こんなん見つけましたよ

今日、リサーチ仕事で図書館に行ったら、児童書のコーナーで見つけた、子ども向けの、藤子・F・不二雄先生の中国語版伝記。 「F先生の伝記」ってだけでもちょっと珍しいのに、「中国語版」ときたもんだ。へぇ〜。あるんだね、こんなの。なんかジャケも、い…

「大人」の恋愛

最近、高野秀行の『ワセダ三畳青春記』という本を読んだ。 一応は小説なのだが、書かれている内容はほとんどが、作者≒主人公(早稲田大学の探検部OB)が実際に体験したことが基になっている。早稲田にある超ボロアパートの野々村荘を舞台に、浮世離れしま…