映画『電車男』鑑賞

※基本的にネタバレはあまり気にせず書いてますので、未見の方はご注意(まぁバレるほどのネタはそうないんだけど)。
ということで観てきました。結論を先に言います。面白かった。払った入場料の分だけの価値はあった。満足しました。では、各論。
電車男
よかった。山田孝之ナイス。序盤の挙動不審っぷり、中盤のよわよわっぷり、クライマックスの熱さをきちんと好演。アキバ系→オタク脱却→中盤落ち込む→励まされてエルメスに告白、という振幅がしっかりと演じられていた。原作にはない、「エルメス」の会社を訪れて雨の中帰宅し、ネット仲間に励まされるシーンは圧巻。「百式」のTシャツはアキバ系小道具としてはどうなんでしょうね? 個人的にはアリだと思いましたが、ホンマモンのアキバ系及び関係者にはどう映ったか興味ある。
エルメス
中谷美紀はよくやりました。今年度の茶太デミー主演女優賞は間違いなく彼女です。もっともライバルは『いらっしゃいませ患者様』の原沙知絵なんですけど。それはさておき、原作や原秀則版で描かれていた「天然さ、お茶目さ」はもうちょっと出してよかったんじゃないかな*1。最初の食事の「今度までに平米数、調べておきますね」と、「電車男」が「エルメス」邸を訪問したときのリモコンのエピソードくらいか。映画の尺を考えるとそれぐらいが関の山かもしれないが。クライマックスで「電車男」の手を握り「がんばって」というシーンはお見事。原作にあった「おとなのキス…」を省いていたのは妥当といえましょう。
●応援役のネット住人
ネットで「電車男」を応援する人間の設定は映画オリジナル。引きこもり青年(瑛太)、倦怠期で家庭内別居状態の夫婦(佐々木蔵之介木村多江*2、彼にふられた看護婦(国仲涼子)、マンガ喫茶にたむろするオタク3人組(岡田義徳三宅弘城坂本真)。それぞれに問題や悩みを抱えた彼らの成長が、電車の成長に沿わせる形で描かれている。まぁ、ここらへんをどう評価するか、だけど。
前述の、雨の中帰宅した「電車男」が励まされるシーンの心象が、線路を隔てて反対側のホームに立つ「電車男」と応援者達なんだけど、ここがとても個人的には気に入った。原作でいちばん好きな台詞である「『エルメス』さんち行きのチケットはJTBでも売ってない」が、引きこもり青年の口から語られるのだが、ここは明確に原作を超えていると思う。不覚にも涙腺が刺激された。あと、オタク3人組の心象でしばしば戦場が描かれるが、これは原作を読まないで観に来た人には何が何やらわからんだろうな。
●脇役・その他
・酔っ払い役は大杉漣。いま、日本映画で「脇を固める」という枕詞が最も似合う大杉漣。大杉なのは「名字」じゃなくて「出番」だよね。
・「エルメス」が「電車男」に引き会わせる友人役は西田尚美。『スウィングガールズ』では音楽教室の生徒役で出てた西田尚美。まぁ、あまり主張しすぎない役なので彼女だろうか。
・「電車男」が「エルメス」を招待する、会員制レンタルアパート*3の受付が白石美帆。『スウィングガールズ』では吹奏楽部の顧問教師役だった白石美帆(って何でいちいち『スウィングガールズ』を引き合いに?)。何で邦画ってチョイ中のチョイ役にもそこそこ有名な人使うんだろう。べノアの店員も田中美里だし。そんなんで予算使っちゃうから、絶対ハズレがなく、そこそこ当たりそうな企画しか通せなくて結果的につまんない映画ばっかになっちゃうような気がするんだけど。
・エンドロールが流れた後の、最後の最後が実にあざとい。どうあざといかは観ればわかります(大体想像はつくだろうけど)。
トリビア
電車男」の掲示板書込ID「S7afk1n」は「スナフキン」と読める*4。「電車男」の夢の中で一度だけ出てくる「エルメス」の書込ID「mn1976」は「Miki Nakatani 1976」と読める*5。気付きました?>KingTowerさん
●まとめ
というわけで後輩の伊藤淳史くんと伊東美咲には悪いけど、多分ドラマ版は観ないだろうな。必要なさそうだし。ちなみにドラマ版での酔っ払い役は泉谷しげるなのでパラレルで押さえておきましょう。


エンディングテーマ以外はよかった。人気blogランキング

*1:エルメス語録」の「カマかけてたんです」で、「エルメス」に舌をペロリと出させた原秀則版の描写の秀逸さを見よ!

*2:どうよ、このフジテレビの木10的なキャスティング。ていうか木村多江がやる人妻役って全部いいよね。返す返すもあの電通マンが羨ましい。

*3:このエピソードは映画オリジナル。「電車男」が本来の自分らしさを見失って背伸びし、結果的に失敗する、という「転」に当たる。

*4:原作では「エルメス」は「ムーミン」にも似ているといわれており「じゃあ『電車男』は『エルメス』の『スナフキン』だな」というくだりがある。

*5:中谷美紀は1976年生まれ。