くちびるNetwork

寒いですな、冬ですな。汗ダッラダラかく私としては、夏よりは断然冬のほうが過ごしやすいのだが、ちょいと冬で不便なのが乾燥による手指のひびわれ、あかぎれ、そして唇の荒れである。
というわけでハンドクリーム的なものやリップクリーム的なものを買ってぬりぬりするわけだ。ハンドクリームはともかく、大の男がちまちまと唇にリップクリームをぬっているというのもなんか情けない絵ではある。しかもアレ、私、ちゃんと使い切ったことがほとんどない。「あ、唇荒れた→リップ買う→ぬりぬり→よくなった→リップ放置→紛失→あれ、リップは?→また唇荒れる→リップ買う(以下繰り返し)」というスパイラルなのだ。なんだよ、「スパイラル」てw。
6年前の3月の終わりに、ギリシャ旅行に行ったときのこと。彼の地も晩冬で寒く、また乾燥していた。私のような「『準備』と書いて『遺漏』と読む」ような人間が、日本からリップクリームなんて気の利いたものを持参してきているはずもなく、だましだまし唇を舐めながらしのいでいたのだが、どうにも限界になった。しかし夜で薬局は閉まっており、翌日は朝イチで国内線でクレタ島にフライトの予定だった。
翌朝。唇カッサカサ、ヒッリヒリの状態で早起きして空港に行き、お昼前ぐらいにクレタに到着。すぐに薬局を探してリップクリームを買いに行った。カタコトの英語で「リップクリームをくれ」と言うと、日本でも見慣れたあの形状のブツが出てきた。さっそくひねり出して唇にぬったくる。すると、日本で使っているリップとは何か違う気がする。
「あれ? このリップの香りは…」
なんと(というほどでもないが)それは、ココナッツフレイバーだった。あまり香料が強いリップクリームは好きでないのに、ぬった唇からずっとあま〜い香りがしていて、気になった。せっかくスブラキやギロを齧っても、ココナッツの風味がするような気がする。まぁ、ぬらないともっと困ることになるのだが。
そんなわけで、旅の後半はあま〜いフレイバーとともに過ごすことになった。私の記憶の中では、クレタの港から見たエージアンブルーの海は、ココナッツの香りと結びついている。
そのリップクリームがどこの国の製品だったかは忘れてしまったが、多分、ギリシャ製ではなかったと思う。海外では意外とポピュラーなものなのかもしれない。とりあえず、日本に持って帰ってしばらく使っていた。そして、使い切るか使い切らないかぐらいの頃、なくしてしまった。いまでもリップクリームは無香料のものが好きだが、あのココナッツフレイバーのものはちょっと懐かしく思うことがある。日本でも手に入らないだろうか。意外とあっさり入りそうな気もするけれど。
そういえば村上春樹のエッセイに「ココナッツフレイバーのシェービングクリーム」というものが出てきて、それを本当にあると信じた読者がさんざん探し回ったあげく、結局創作だとわかった、という話があったが、私が今回書いた「ココナッツフレイバーのリップクリーム」は本当にあるので念のため。まぁ、真似して使ってみようなんて人はいないだろうけど。




いまはメンソレータムの「リップピュア」ってのを使ってる。人気blogランキング