歌は世につれ？ 世は歌につれ？
文化庁が「日本の歌百選」を選んだんですってよ、奥さん。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070114-00000042-jij-soci
文化庁と日本PTA全国協議会は14日、歌を通じて世代間の触れ合いを深めてもらおうと、親子で長く歌い継いでほしい童謡・唱歌や歌謡曲など101曲を「日本の歌百選」に選定した。
「赤とんぼ」や「靴が鳴る」「大きな古時計」など古くから親しまれている歌のほか、中島みゆきさんの「時代」やSMAPが歌ってヒットした「世界に一つだけの花」、森山良子さん作詞の「涙（なだ）そうそう」など近年の曲も入った。
で、その101曲はこちらでございます。
http://www.uta100sen.jp/
たった101曲では万人を納得させるチョイスなんてどだいムリな話ですが、童謡・唱歌のたぐいは概ね順当というか、最大公約数的な選曲となっているのではないでしょうか。私がいまパっと思い浮かぶ範囲だと『かわいいさかなやさん』とか『きんぎょのひるね』あたりは入っててもいいような気がするけどな、唱歌・童謡部門では（他にもある、という方いらっしゃいましたらご意見募集）。
さて問題は歌謡曲ですよ。ちょっと見てみると選出されているのは『いい日旅立ち』『いつでも夢を』『上を向いて歩こう』『川の流れのように』『高校三年生』『秋桜』『こんにちは赤ちゃん』『時代』『世界に一つだけの花』『翼をください』『涙そうそう』『花』『見上げてごらん夜の星を』『リンゴの唄』の14曲*1。漏れてないかな？ 関係ないですが、春の選抜の入場行進曲とけっこうカブってますね*2。
うーん、なんかこれはちょっとなぁ。まずジャンルの偏りが気になる。たとえば演歌は入ってないし、フォークも一曲しかないよね。リストの26に、西條八十訳詞、草川信作曲の『風』なる歌（よく知らない）が入っているけれど、同じ『風』ならはしだのりひことシューベルツのほうを入れてやってはもらえんか。あれは名曲だぜ。ちょっとペシミスティックかもしれないけど、まぁ人生なんてそんなもんだからね。割とざっくりまとめてみたけど。そういえば、さだまさしは本当に『秋桜』だけでいいの？ 『案山子』をなぜ入れない？ 「世代間の触れ合いを深めてもらおうと、親子で長く歌い継いでほしい童謡・唱歌や歌謡曲」を選んだんでしょ？ この曲ほど親子の情愛をほのぼのしみじみと感じさせる曲もないよ。セールスはおそらく目安でしかないだろうから、この曲を入れない理由はないはずだ。夫婦だの兄妹だので殺し合って遺体をバラバラにしちゃう陰惨な事件が頻発する昨今、「家族愛」を歌った歌謡曲はマストではねぇの？
偏りといえばジャンルだけじゃなくて年代のそれも気になるよね。まぁ、そういう趣旨ではないんだろうけど、90年代の曲が一つしかない*3のはなぜかしら？ 60〜70年代がやけに多いのはどうしてかしら？ どうも選考委員のお偉方*4のジェネレーションに寄ったイージーなチョイスだったのではないのかな？ と勘繰りたくなってしまう。
ま、文句ばっか言っても仕方ないんですが、そもそも、こんなのわざわざ選ぶ意味あったのかな？ 永く歌い継がれ、親と子と孫をつなぐ曲があるのはとても結構なことですし、私もそれがあればいいなと思いますが、そういう「親子で歌える歌」とか「国を愛する心」なんてものはお上から押し付けられるもんじゃない、なんて屁理屈を言い出す人が出ないといいですね。
昭和の末に、某誌に掲載されたいとうせいこうさんのインタビューより。
大人がよく「俺たちの時代はみんなで口ずさめる歌があったが、今はない」って言うけど、バカヤロウ！ 冗談じゃないと思うわけじゃない。（中略）逆に国民がみんなで口ずさめる歌があった頃が暗黒時代でさ。そんな価値基準を今の人に押しつけたり、子供に対して「みんなで口ずさめるいい歌を提供したい」って言っても、文部省唱歌とかを誰も聞くわけないし。
ま、私自身はそこまで割り切った考えでもないんですけど、結局そういうことなんじゃないんでしょうかね。文部省唱歌どころか、歌謡曲だっていまみんなが聴くわけじゃないですし*5。紅白の視聴率が40％を割るご時勢ですもの。
ところで私が自分で好きに選んでいいんだったら、童謡の部門には絶対『ちこたん』を入れたい。
