せめて奥義で葬ろう

そういえばもうすぐ引退しちゃう飯島愛姐さん*1なわけだけれども、私には以前から、彼女が喋るときにいつも気になることがひとつある。
「ていうかー、あたしマジこんなおいしいマグロ食べたトキないんだけどー」
おわかりだろうか。経験、体験を表す「コト」という形式名詞の代わりに、彼女は「トキ」を使うのである。「あたし、アメリカに行ったトキ(コト)あるよ」「こんなヘンな人、見たトキ(コト)ない」。
いかがだろう? 「そういわれれば確かにそう言ってたかも」とお気づきになる方もいれば、「いや、彼女がそう言ってるのなんて見たコトない」という方もいると思う。
ここでは、その日本語の適否を問おうとしているのではない。その言葉を使う人々について考えたいと思うのである。私が上で書いた「トキ/コト」の例文を見て、飯島愛がそう言っているかどうかについては知らなくとも、この漫画を思い出した方は多いかもしれない。
そう、特攻の拓である。
疾風伝説特攻の拓 第1集 (KCスペシャル)
横浜の暴走族の少年を主人公とし、多くの不良少年が登場するのがこの『特攻の拓』である。詳しくは一読していただきたい、としか言いようがないのだが、この漫画のネームにおける、登場人物の言葉遣いは大変にユニークである。一例を挙げよう。
「あァ? テメェ、あんま“チョーシ”くれてっと…、“バッキバキ”にされんゾ!?」(訳:なんだい? 君、あまり調子に乗っていると、体がバキバキと音を立てるまで(私に)殴られてしまうよ?)
とまぁ、こんな調子のセリフが随所に登場するのだが、当然、登場人物の8割以上は暴走族の不良少年である。中には「少年」なのか(あるいは「人間」なのか)疑わしい人物もいるが、ともかく作中でそういう少年達は、やはり経験を意味する名詞「コト」の代わりに「トキ」を頻繁に使っている。「や、やべぇ…。武丸サンのあんな“目”…、見たトキねぇぞ」という具合だ。
ここで私はひとつの仮説を立てた。自らの著書で告白しているが、飯島愛自身も不良と呼ばれるような少女時代を過ごした。また、最近はあまりTVで見かけないが、タレントのヒロミも「トキ」を使っていたのを私は見たことがある。そして、ヒロミも暴走族に所属していた過去を公言している。つまり、理由までは定かでないが、「トキ」というのは主として関東地方の、いわゆる「不良」と呼ばれる少年少女たちがよく使う言葉なのではないか、ということである。
しかし、私は実際に「トキ」と言っている不良を見たことがない。それどころか、身近で「トキ」を使っている人も一人しか知らない。それは以前勤めていた会社の同僚なのであるが、松嶋菜々子に似た色白の秋田美人で、某一流大学を卒業している。
ここで私は、自分の仮説の矛盾を認めるべきなのか、それとも実は彼女はバリバリの元ヤンだったという演繹的結論に辿り着くべきなのか悩んでいる。




方言的なものだったりもするのかな? 人気blogランキング

*1:そういえば、いつから、何をきっかけで彼女が「姐さん」と呼ばれるようになった(そう呼ばれるキャラや地位を獲得した)のか、『ギルガメッシュないと』から知る世代としてはいまひとつわからない。多分『プラトニック・セックス』以降なのだろうと思うけど。