辞書ごっこ

私が子どもの頃から、というとちょっと大げさだが、中学生の頃ぐらいからときどきやる遊びに「辞書ごっこというのがある。
ひとり遊び(二人以上でもできないことはないが)なのでもっぱら暇つぶし用の、たあいもないゲームである。いや、ゲームというほどのゲームでもない。とにかく、ちょっとした酔狂な遊びなのだ。
用意するものは辞書。それとあり余った時間。これだけである。
ルールはとってもカンタン。自分の中でなんとなく気になることば(固有名詞以外。動詞や形容詞、慣用句などが適)をひとつアタマに思い浮かべ、それを辞書風に自分で定義してみる、というものだ。
たとえばいま、ぱっと「ていたらく(体たらく)」という言葉が浮かんだので、これを自分なりに、辞書風に定義してみる。

ていたらく【体たらく】
(多く、好ましくない場合について用いる)状態。ざま。様子。
「昨日の試合でのあの――はなんなんだ」

ちゃんと用例、例文も作る。で、答えあわせとして辞書を引き、それがどう定義されているかを見る。
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%9F%E3%82%89%E3%81%8F&dtype=0&dname=0na&stype=0&pagenum=1&index=13082712602200
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%9F%E3%82%89%E3%81%8F&dtype=0&stype=1&dname=0ss
私の定義もポイントは外してないようだけれど、たとえば「ありさま」っていう言い方は私は使ってなかったな、ということがわかる。また形容動詞「体たり(「そのような状態である」の意)」のク語法*1ということは初めて知った。勉強になるなぁ。
またこれで、辞書にない言葉の定義を自分で作ってみるのも面白い。

つり-きち【釣りキチ】
(「釣りきちがい」の略)人並みはずれて釣りが好きな人。また、その様子。
「彼はかなりの――だよ」

この場合のポイントは「人並みはずれて」だろう。いかに「きちがいじみて」釣りが好きなさまを、辞書的に穏当に、しかし正確・的確に定義できるかが「辞書ごっこ」のキモだ。
こんなことを私は10代のころからたまにしていた。いまもときどきしている。子供のころから辞書を「本」として読んでいたので、辞書っぽい定義文のテイストがなんとなく頭に入っているのだ(だから、「たほいや」とかはけっこう自信がある)。
また、これをやると国語力がかなり身に着く。語彙だけでなく、表現力もつく。私がクイズで、「すぐれた人がいない場所でつまらないものが幅を利かすことを/『鳥なき里の』何というでしょう?」みたいな問題で、たいていの場合「/」のポイントで答えることができるのは(というか「ことば問題」全般が比較的得意なのは)、この「辞書ごっこ」によるところが大きい。
生徒の国語力アップにこんな試みもいいんじゃないかな、と以前、知り合いの国語の先生に雑談っぽく話したら、「そんなこと、普通の生徒にはやらせたってまずできっこないよ」と返された。
ここまではっきりと、昔の自分が「異常(=「普通の生徒」じゃない)と言われるとは思わなんだよ……。




「辞書占い」「辞書いじめ」という遊びもあるが、それはまたの機会に。人気blogランキング

*1:「すべし」が「すべからく」になるのと同じ例。