うっかり一斗さん

むかしむかし。1月の寒い時期に、教員免許の取得に必要な「介護等体験」というやつで、特別養護老人ホームへ5日間、実習に通ったことがあります。そのホームは、要介護度の高いお年寄りが入居している特養の部分と、通いでやってこられるお年寄りのデイケアの部分とに分かれており、私はどちらにも数日間ずつ行ったのですが。
その日はデイケアでの体験だったので、早朝からそのホームの車に乗って、通所してくるお年寄りを迎えに行くのでした。前日までが特養での体験で、食事や排泄にも介助が必要なお年寄りを相手にしていましたが、今日からは、足腰も頭も比較的しっかりした方々がお相手です。なもんで、みなさん朝からお元気で、そのおばあさんも車の中でも楽しそうにおしゃべりをしていました。そんな方の話し相手になるのも、私のすべきことです。おばあさんは言いました。
「もうすぐ1月も終わりよ、ついこの間、年が明けたと思ったのに、早いわねぇ」
私も相槌を打ちます。「本当ですねぇ」
「あなた、知ってる? 1月は『行く』、2月は『逃げる』、3月は『去る』って。ねぇ、本当に早い。でも、4月はなんていうのかしらねぇ?」
私は言いました。
「さぁ…『死ぬ』じゃないですかね?」


違うの、ホントに口が滑っただけなの。うっかりしてたの。フロイディアン・スリップとかそんなんじゃないの。いやマジで。





まぁそのおばあさんも笑ってくれたからよかったけど。人気blogランキング