チバさんのこと

昔、私が会社に勤めていたときのこと。
いまでは珍しくもないけれど、その当時うちの会社では、首からストラップで下げる、顔写真つきのIDを導入した。ちょっと固くて古風な感じの会社だったので、最初は(主としておっさん方面から)抵抗、というか戸惑いがあったようだった。
あるとき、確か飲み会かなんかで話題がIDのことになり、訳知り顔の参与(←そういう訳のわからん肩書きがあるあたり、「古風」な社風を推し量ってほしい。ちなみに参与は天下りで、当時60代半ばぐらいだった)が、「いまどきあんなID、珍しくもないよ」と言った(「古臭い人間ではないぞ」的なアピールだったのだろう)。
「ここらへんの会社なら、けっこうあちこちやってるよ。昼休みなんか、OLさんが首から下げたまま、平気でラーメンなんか食べに行ってるよ」
顔写真付きIDに不慣れな我々がこの話を聞いた、という前提で考えると、この場合のリアクションとしては「え、OLさんが!?」か「え、首から下げたまま?」が普通だと思うのだが、当時の私の直属の上司・チバさん(仮名)はこう言った。
「え、ラーメン!?」
チバさんはときどき、すっごく大真面目な顔でこういう冗談ともつかないことをしれっと言う人だった。私も以前に、急ぎの書類を「すいません、これ○○社に『ファック』してください」と超真面目な顔でキッパリ言われ、不覚にも吹いてしまったことがある(あのときは、「負けた」と思った。「勝ち負け」の問題なのかどうか知らないが)。
去年の年末、たまたま前の会社のあたりをぶらっと歩いていたら、チバさんに出会った。チバさんはまだ私のことを覚えていてくれて、声をかけてくれた。お互い用事があったので、二言、三言ほど言葉を交わしてすぐに別れてしまったのだけれど、時間があったら、一緒にラーメンを食べに行きたかった。





もらった名刺によると、いまは軽く冷や飯を食わされているらしく。人気blogランキング