『半沢直樹』に思う

もともと私は、ほぼまったくドラマを観ない人間だったのだけれど、この2年間で、以前と比べればまぁ少しは観るようになったと思う。
で、『半沢直樹』である。もともと堺雅人が好きだったのでなんとなく見始めたのだけれど、これにハマってしまった。のみならず、巷でも大人気となり、高視聴率を連発しているのはご存じのとおりだ*1。以前は、社会現象になるようなドラマ(『家政婦のミタ』とか)の話題には全く乗れなかったのだが、今回は「話題になっているドラマの話題に乗っかれる*2、話題を世間と共有できる」という、個人的にちょっとレアな状態になっている。
さて、このドラマでは銀行員の(ある程度)リアルな日常や裏事情などが描かれている点も特徴だが、ちょくちょく出てくるキーワードに「出向」がある。単純にいえば、仕事でやらかしてしまったり派閥争いに敗れたりすると、融資先の企業などに飛ばされてしまうというアレだ。もっとざっくり言えば、「左遷」である。ドラマでも、エリートコースを歩んでいた銀行員が、国内外の「出向先」に飛ばされたりしている。
今から9年前、私は某特殊法人(便宜上、「会社」と書く)に務めていた。北から南まで全国で5万人のスタッフを抱え、病院経営など様々な事業を展開していた、まぁ小さくはない会社だ。5年間務めたうちの4年半を、私は本社の人事部で過ごした。別にどうとも思っていないので臆面もなく書くが、「本社の人事」といったら、内部ではエリートコースと目されていた。しかも私は人事部内での横すべり異動も経験していたので、それなりに期待されていたものと見える。
しかし、仕事上でなかなかしんどいことになった時期もあり、ほんの一時期だけ、精神科のやっかいになった。もっとシリアスな症状の方からは「甘ったれるんじゃねえ」と言われそうなぐらいの軽いものではあったが、睡眠障害やら嘔気やらが出ていて苦しかったのである。
私のいた会社では福利厚生の一環として、提携している精神科のクリニックがあり、かかったらその費用を会社につけ回すことができた。受診の事実は他に知られることはない。人事部長と人事課長を除いては。
私はほんの少しだけ迷った。もしこの請求書を会社に回せば、直属の上司たる人事課長に知られるわけである。しかし、あれこれ考えるのがめんどくさかったし、仕事でこんな目に遭っているのに自腹を切るのも癪だったので、軽い気持ちでそのまま請求書を会社に回してしまった。
数日経ち、私は人事課長に呼ばれた。
「お前、病気なのか?」。その頃はまだそんなに浸透していない言葉だった気がするが、パワハラの噂の絶えない人だった。
「いえ、まぁ、大したものではありませんが…」
「お前さ、少し病院でゆっくりしてきたら?」
「え? いや、入院するほどのものじゃ全然ないですよ。普通に会社にだって来られてますし」
「違うよ。病院に異動させてやるから、そこでゆっくりしてこいって言ってるんだよ」
というわけで、年度末でも何でもないやや唐突な時期に私は、「エリートコース」の本社人事部から、その会社が経営している病院の業務部に移動と相成ったわけである。このブログを開始した2005年の時点では、まだその病院で働いていた。
銀行員の出向とはまた話が違うが、本社とか本部といった中枢から、そうではない場所へ飛ばされる話を見ていて、ふと思い出したので記す。
なお、私は病院へ異動となってから半年でその会社を退職した。前々から考えていたことだったのでその異動とは直接関係ないのだが、本社では「左遷を不満に思って一斗が辞めた」と噂になったそうである。



その上司に「倍返し」は…もう今となってはどうでもいい。人気blogランキング

*1:9月8日オンエアの第8話が平均で32.9%、瞬間最高視聴率で37.5%ですってね。

*2:といっても『あまちゃん』は観ていないが。