一周忌

金曜は、祖父の一周忌だった。
8年前、このブログを開始したとき、最初のほうのエントリで取り上げた、母方の祖父だ。両親や伯父・叔母らは、祖母の家に行って線香の一つもあげにいったようだったが、私を始めとした孫連中は仕事があるので、また日をあらためて法事的なイベントをやると母から先週聞いた。
昨年の9月6日、木曜日のことだった。出勤途中の電車の中で、母からメールが来た。
「おじいちゃんが昨日から、風邪で入院しています。たぶん大したことないとは思うんだけど」
過去に心筋梗塞を二度やって、その度に生還した祖父だった。とはいえその時点で祖父は95歳、ただの風邪だって、何がどうなるかわからない。
「わかりました。もし何かあったり、人手が必要だったらまた連絡ください」
そう返信して、私は出勤した。
毎年9月のその時期には、仕事で、大してややこしくはないが量的にわりあい多くて、メンドくさいタスクがある。いつもは土日に出勤してチンタラ片づけるのだが、その日はどういうわけか、特に理由もなく、ふと思い立って「やっちまおう」と思った。昼食を摂った後、作業部屋に籠ってひたすらちまちま、タスクを片づけていく。いつもなら集中力が途切れがちなのだが、その日はなぜか黙々と作業が進み、捗った。
夕方になってタスクが終了したが、それからしばらくして、母からメールが来た。
「おじいちゃんが亡くなりました」
上司に事情を話していったん帰宅し、家で喪服に着替えて藤沢にある母の実家に駆け付けた。前年の11月にあいさつに行ったのが、結果的に最後になってしまった。もう呼びかけても応えてくれない祖父は、生前よりも縮んで見えた。
やはり駆けつけてきた弟や従姉妹たちと祖父を囲んでいると、母に、「お前も仕事が忙しいだろうけど、告別式来られる?」と訊ねられた。
「いつ?」
「あさっての土曜日、13時から」
土曜か。土曜は出勤して例のタスクを片づけ・・・てあったんだ、もう。
そのとき、わかった。なんで自分が、特に理由もないのにいつもより早く、あのタスクを終えてしまおうと考えたのか。
祖父にとって私は初孫だったから、よくかわいがってもらったものだった。そんな祖父が、「茶太。悪いけど、最後に顔を見せに来てくれないか」と私にきっと言っていたのではないか。今となっては、都合よくそう思う。
ときどき作ってくれた焼き餃子が、本当に絶品だった。最後に食べたのはいつだっただろう。また食べることどころか、作ってくれとせがむことも、もうできない。



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