ナニワ串揚げ道

以前も書いたが、私は生まれも育ちも首都圏で、一族郎党もれなく関ヶ原以東に住んでいるのに、味覚の嗜好は家族の中で私だけ完全に関西寄りである。うどんは昆布だしの薄口が好きでご飯をつけなければ始まらないし、お好み焼きといったら関西風で、当然ながら「おかず」という認識である。最近ではとんかつよりビフカツの方が好きになってきてしまったくらいなので、一瞬本気で関西移住を考えたこともある。
で、特にうどんに代表・象徴されるような「同一の食物における関東と関西の味覚の差異」*1というやつで、とりわけ私が関東の味を嘆くことしきりなのが「串揚げ(串かつ)」なのである。何が私を嘆かせるのか? それは「関東で食べる串揚げってどうしてあんなに高くて気取っているんだろうか?」ということなのである。というわけで、こちらには何の恨みも罪もござんせんが、新橋の串揚げ屋「ひげ増」さんhttp://r.gnavi.co.jp/g256300/にとりあえず比較対象としてご登場願おう。メニューはこちら。http://r.gnavi.co.jp/g256300/menu1.htm
「ふーん、これが何か?」とスルーしたあなたは確実に関東に毒されている。まず真っ先に「いちばん安い串が158円ってどういうことやねん!?」とツッコミを入れなくてはならない。返す刀で「いちばん高い串が420円て、お前は『ナニ上ファンド』やねん!?」とその金満っぷりを批判せねばならない。そりゃ確かにこの店は、東京でいえばそれほど高いというわけではない店だし、もっと高い店だっていくらでもあろうからここばかりを責めるのは酷だが、それにしても、である。串揚げはあくまで「串揚げ『でも』食べにいこうか」というポジションにあるべき食べものなのだ。平均予算4,500円なんざ、串揚げに対して出す値段ではない。価格帯は最高でも250円ぐらい、最低で80円ぐらいが理想的といえる。安すぎると思ってはいけない。大阪に行けば実際にそんな店はあるのだから。また、串揚げは山海の美味珍味を揃えて揚げるようなものでもない。ごくごく身近で、あまり手のこんでいない食材やタネをカラっと揚げてハフハフっと(できれば立って)食すべきものでないといけない。よって次のツッコミは「バナナのベーコン巻て何やねん!?」「何で『ずり』あらへんねん!?」でキマリだ。大阪の「そういう」串揚げ屋(大阪にも気取って高い串揚げ屋は存在する)のメニューには「砂ずり(ずり)」が(それも最低価格帯に)あるところがある。関東でいうところの「砂肝」だ。必ずしもあるわけではないが、「ずり」という呼び名も含めて「元祖・大阪」という感じの串揚げ屋にはぜひあらまほしい一品といえよう。アツアツに揚がったコリコリの「ずり」を噛みしめて、酎ハイでも流し込んでみたら、それはそれはもうナニワである。
思えば私が初めて大阪の串揚げを食べたのは、確か学生時分、20歳のときだった。先輩の『アタック25』の収録についていき、その帰りに新世界で堪能したのだった。いやぁ、飲んだね。お天道様高いうちから。串食いまくって。これでドデカいカルチャーショックを受けた私は串揚げのとりこになり、以来大阪に行ったときは必ず新世界に寄り、食べるようになったのである。やはり最初の刷り込みが大きかったのだろう、こと串揚げに関しては(東京風の)気取って高い店を認めなくなってしまった。
などとうるさいことを言ってきたが、実は東京にも私が知る限り、大阪風の串揚げを出すお店が一つある。港区は三田、慶應大学にもほど近い田町駅前の「たけちゃん」である。http://ousaru.sakura.ne.jp/94/take/
どうよ、三田? じゃなくて見た? お品書き。だいたいこういう種類および価格帯のものがいわゆる「ナニワ」の正統派串揚げと思っていただいて結構である。ちゃんと砂肝もありますがな。で基本、この店はスタンディングなんで、中島らもの「せんべろ」の流儀で言うところの「ダークダックススタイル」*2で粋に食べたいものだ。実は一人暮らしをしていた頃、寮にほど近かったので時々通ったのであるが、実家に出戻り&職場異動後はちょっと足が遠のいている。行きたーい。誰か一緒に行きませんか?(家が近いabarehaccyakuさんは半ば義務とみてよい)
しかし、やはり大阪に出向いて本場のものを食べるのが本道である。どうしよっかなぁ。映画そんなに興味ないけど、串揚げメインで「映画クイズショウ」行こうかしら。あ、davide邸での集いにもぜひ伺わないと。こっちは宿もどこかに確保して、davide邸と串揚げの両方をガッツリ堪能する気で行かなければ。どうせ集いで酔いつぶれそうだし。



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*1:これに関しては『美味しんぼ』で例によってくっだらない話があった。関東と関西のカップルが、稲荷ずしのご飯とかうどんのだしとかで小泉社主をやっつけるやつ。

*2:少しでも多くの客が入れるよう、カウンターに斜め半身になって飲むスタイル。