私にはもうわからない

大鵬薬品の「ソルマック」のCMをご覧になったことがあるだろうか。何年か前から、昔懐かしい『ド根性ガエル』のキャラクターが登場している。っていまの若い人、『ド根性ガエル』なんて知ってるのかなぁ。まぁ私だってTBSでやってたときのは知らなくて、日テレでやってた『新・ド根性ガエル』を見てたってぐらいの世代なんですけど。一応書いておきますが、この『新・ド根性ガエル』のOP曲『ピョン吉ロックンロール』がとんねるずのデビュー曲なのですよ。
そんなことはどうでもよくて、件の「ソルマック」のCM。ひろしにピョン吉、京子ちゃんにゴロー、ゴリライモにラッキョ(だっけ? ゴリライモの子分みたいなやつ。ハート型のハゲがあるの)、寿司屋の梅さんに「教師生活25年」の町田先生、マドンナのよしこ先生などほぼオールスターでお届けしている。で、胃腸薬という性質上、そのキャラクターが食べ過ぎ、飲み過ぎて「ソルマック」のご厄介になるわけなのだが、その飲み食いのシーンの下に、注意して見ていなければ気がつかないほどの細かいテロップが出る。
(※↓CMはこちらでご覧になれますぞ)
http://www.taiho.co.jp/healthcare/tvcm/index.html
「このCMの全キャラクターは、成人の設定です」
…何これ?*1 入れる意味のあるテロップなの? これは誰に対する何の配慮なのだろう? この一文があるのとないのとで、何が違うというのだろう? まさか「未成年者の飲酒を助長しないため」なんていう、こじつけとしか言いようのない理由だったりするのだろうか? いや、そうとしか考えられないが、その理由そのものが理解に苦しむ。
そもそも、虚構のキャラクターに必要以上にそういった現実世界の理屈を持ち込むこと自体が私には疑問であるのだが、百歩譲ってそれを認めるとしよう。しかし、いま現役バリバリでオンエアされている『ドラえもん』や『サザエさん』の未成年キャラクターが飲んでいるわけではない。20年以上も前にオンエアされたアニメで、しかもCM中では彼らも(それとわかるように老け込んではいないが)相応に年を取っているのである(ひろしが結婚したり、同窓会に出席したりといったパターンがある)。まともに考えたら、胃腸薬のCMに中学生のキャラクターが出るわけがないではないか。そもそも、あのアニメを子供の頃見ていた層がいま大人だからということで、きっと起用されたはずである。ならばあのアニメのキャラクターを見て「おいおい。ひろし、中学生なのに酒飲んでるよ」という大人がいるとは思えないし、昔のアニメなのだから、いまの中学生が「あ、中学生のキャラがお酒飲んでる。じゃあ僕も」と思うとも考えにくい。
最近、CMにおけるこの手の表現に対する、(おそらくは事実上の強制であろう)「自主規制」が神経質すぎるような気がする。そりゃ、そのまんま真似したら危険な事故につながるようなCM*2には入れるべきだが、最近ではちょっとしたシャレやジョークの類いにも、わざわざ「CM上の表現です」と言わずもがなのことわりが入る*3。CMでは子供にものを言うように「危ないから真似しないでね」「CM上の絵空事ですよ、本気にしないでね」なんていう無駄な注意書きを入れ、番組では「ここが面白いから、ここで笑うんですよ」と言わんばかりのテロップを入れる。TVはどんどん、視聴者に自分の頭で考えさせない方向に向かっている。ってほんの端くれの端くれの端くれとはいえTV番組に関わっている者としては、他人事のように語るべきことではないのだけれど。
そのうち、テロップで埋め尽くされたCMとTV番組を見せられる日が来るのだろう。そして、少しずつテロップに慣らされ、自分で考えることを停止させられていった視聴者達は、その日が来てもそれを疑問に思うことはないのだろう。



そういえば煙草のTVCMはついになくなっちゃいましたね。人気blogランキング

*1:念のため書いておくと、『ド根性ガエル』のアニメ・原作ではひろしたちは中学生である。

*2:「アロンアルファ」とか、いすずの「ジェミニ」なんか懐かしいね。ってわかる年齢の人だけわかってください。

*3:最近では、なんか壊れにくいコピー機のCMで、チェンソーとかの武器を持ったOLたちが保守の業者に迫る、みたいなやつにも同様のテロップが入っていた。