ユッコとチョーさんとシンクロニシティ

先日、abarehaccyakuさんと某特番の収録に参加したときのこと。収録開始までの待ち時間、サブで、昭和芸能系懐かしトークに花を咲かせていた*1。お互い同い年でTVっ子だったので、そんなしょーもない話は無尽蔵に、湯水のごとく出てきたわけなのだが、その中で私が、岡田有希子の自殺に関するこんな話をした。ちょっと前に、都市伝説的に耳にしたものだ。
「ユッコが亡くなった日、ある番組がオンエア中に速報で『タレントの岡田有希子さんが自殺』というテロップを入れた。直後、CMに入ったが、なんの偶然かそのCMは、まさにユッコ本人が出演していたものだった」
人気絶頂の只中で突然命を絶ってしまった彼女を象徴するような話である。アイドルとしてまさに活躍中だったときの悲劇と、差し替えや中止が間に合わなかったCM。ぞっとした後、悲しさがこみ上げてくるようなアーバン・レジェンドだ。
そんな話を「まぁ、都市伝説みたいなものだと思うんだけどね」と前置きしてabarehaccyakuさんにしたら、彼はあっさりと「それ、本当の話だよ。俺、見てたもん」と答えた。
彼の記憶では、その番組は『笑っていいとも!』であったという。自宅で、家族とTVを見ていたら速報テロップが入った。abarehaccyakuさんは特に岡田有希子のファンだったというわけではなく、格別の思い入れもなかったそうだが、それでも現役アイドルの突然の訃報に、茶の間は「まぁ、気の毒な」という空気になった。そして番組はCMに切り替わる。すると、切り替わった直後に流れたのは、彼女が出演しているグリコのカフェゼリーのCMだったのだ。
「いきなり自殺なんて、と驚いた直後に流れたからそれは妙に覚えてる。少なくとも、何かの番組でテロップが出た後に岡田有希子のCMが流れたのは本当だよ」と彼は言った。私は驚き、そして「よくできた都市伝説」だと思っていたものが、いとも簡単に「事実」だとわかってしまって少々戸惑った。しかし、根も葉もない話ではないということがわかったのは収獲であった。 
そこで私も、これとよく似た、しかし確かに自分がこの目で見た話をすることにした。この話を私以外の誰かが話題にしたり、ネットなどで流布しているのを見聞きしたことは、知る限りではまだない。だが、紛れもない事実である。
2004年3月20日。その日は土曜日だった。土曜日ではあったが、私は出勤し仕事をしていた。年度末だったので連日深夜まで残業し、それでも間に合わず休日出勤、という日々が続いていたのだ。その日も23時近くまで仕事をしていた私は、帰宅してビールを飲みながら『チューボーですよ!』を見ていた。そのときのメニューは「みたらし団子」で、大して興味もなく眺めていたのだが、途中で速報のテロップが入った。「タレント・俳優のいかりや長介さんが死去。72歳」。
思わずモニタに釘付けになった。子どもの頃、毎週楽しみに見ていた『8時だヨ!全員集合』のチョーさんが亡くなった。私の中では『ドリフ大爆笑』でもましてや『踊る大捜査線』の和久さんでもなく、「オイッスー!」とちびっ子に叫び、「何やってんだバカモン!」とメガホンで加藤茶志村けんをひっぱたく、あのチョーさんが亡くなった*2。突然のことで驚くともに、私は喪失感を感じていた。高齢であったから、たとえまだ生きていたとしても、彼が今後かあちゃんコントや学校コントをドリフターズの面々と演じることはまずありえない。でも生きていれば、その可能性は(限りなくゼロに近いにせよ)ゼロではない。しかし、もうチョーさんはどこにもいないのだ。もうどうしても、我々はチョーさんの「オイッスー!」を聞けないのだ。
そのとき番組中では調理のポイントとして、だんご生地を練るときに加える熱湯の湯加減を説明していたのだが、速報テロップにかぶって流れていたBGMはドリフターズの『いい湯だな』だった*3。チョーさんの訃報を伝えるBGMが『いい湯だな』。これはもはや偶然ではなくて、ある意味、必然だと私は思った。そういえば『チューボーですよ!』は奇しくも『全員集合』と同じTBSの番組であり*4、そしてその日は土曜日だった。毎週土曜の夜、全国のちびっ子を沸かせ続けたチョーさんは、逝くのもやはり土曜を選んだのだろうか。
先のユッコの件もこれも、ただの偶然だと片付けてしまえばそれまでだ。しかし、もしそこに偶然を超えた何かが働き、何かの意思のようなものが込められていると(センチメンタルにも)考えるとするならば。それに気づくことができた者が、こうして折に触れ語っていくことに、いささかなりとも意味はあるのかもしれない。ないかもしれないけど。




チョーさんが亡くなった病院は、私の職場のすぐ近くにあった。人気blogランキング

*1:殊に『月曜ドラマランド』の話題でかなり盛り上がった。『キップくん』『のんきくん』『夢カメラ』『おそ松くん』……。

*2:この際だから言うが、私の中では「チョーさん」といったら断じていかりや長介のことであって、長嶋茂雄なんかではありえない。ましてや『たんけんぼくのまち』の長島雄一でもない(そういえばこの人にも有名な都市伝説があるな)。

*3:「熱湯の湯加減」で『いい湯だな』とは、いかにもハウフルスだ。『タモリ倶楽部』以外でもチョイチョイこういうことがあるので見ていて油断できない。

*4:さらに、MCの堺正章とドリフは『西遊記』つながりでもある。さすがにこれはこじつけっぽいか。