腐乱死ーぬの場合は

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私の知人の警官から聞いたお話。
ご存知の方もいるかもしれないけれど、警察学校を卒業した人は、捜査一課で殺しを追っかける人だろうが、コワモテを買われてマル暴になる人だろうが、生活安全で盛り場の悪ガキを補導する人だろうが、最初はほぼ全ての人が「巡査」として交番勤務を経験する。現在は白バイ警官をしているその知人もご多分に洩れず、某私鉄の某駅近く(芸能人がいっぱい住んでいる高級住宅街)の交番でお巡りさんをしていた。
警官というのはその仕事の性質上、「仏さん」を見ることが日常茶飯だったりする。ある夏の日のこと。その交番の管内の団地で、独居老人が亡くなり腐乱死体で発見された、という通報が入った。新米巡査のその知人は、先輩に連れられて現場に向かった。
よく言われることだが、腐乱死体というのは死臭というか腐臭が物凄い(らしい)。この老人の遺体も、近所の住民が異臭に気づいて発見されたものだった。現場に向かうパトカーの中で、知人は先輩に「お前、(腐乱死体を見るのは)初めてだろ? いいか、絶対に鼻で息をするなよ。ぶっ倒れるぞ」と諭されたという。まぁその先輩には、新米をビビらせてやろうという気持ちも多少はあったかもしれないから額面どおり受け取っていいものかわからないが、よほど強烈な臭気であることは間違いないのだろう。知人は思う壺でビビりながらパトカーに揺られていた。
現場に着くと確かに心なしか、パトカーを降りた時点で既に異臭が漂っているような気がする。言われたとおり口で息をしながら、知人は老人が見つかった部屋へとその団地の廊下を歩いた。問題の部屋の前に辿り着くと、先輩が知人に命じた。
「おい、お前が開けろよ」
知人のドキドキはMAXに達し、えいやっとばかりに目をつぶってドアを開けた。口で息をしていても、筆舌に尽くし難い臭気が押し寄せてくる。と、奇妙なことに彼は気が付いた。
その日はよく晴れたいい天気で、しかも昼間である。また、その部屋は角部屋で日当たりも比較的よく、カーテンが引かれているわけでもない。なのに、なぜか部屋が薄暗いのである。‎
「…なんでだ?」
そして、現場検証のため玄関の中に一歩足を踏み入れた知人は、部屋が薄暗い理由を自分の目で確かめてしまうことになる。知りたくなかったとしても知らざるを得なかったその理由を知ってしまったことを、知人は激しく後悔したという。
部屋が薄暗かった理由。それは、その腐乱した死 体にわいたウジがハエとなって、窓にびっしりと張り付いていたからであった。
…だから読まないほうがいいって言ったのに……。




なんだかんだ言ってタイヘンだね、警官も。人気blogランキング