読んだり食べたり

もう丸2年近くも、自分で包丁を握って料理なんぞはしていない。していないが、それでも一人暮らしのときはときどき自分で簡単な料理を作って食べたし、それ以前の実家暮らしのときも、ごくたまに気まぐれで腕を振るったこともあるが、まぁとにかく基本的に自分で料理を作ったりということはあまりしない(やらなきゃ、とは思っているけれど)。
いちばん大きい理由は「メンドくさいから」なのだが、それ以外に「何を作ったらよいのかわからないから」というのもある。レパートリーは少ないし、手の込んだ料理も作れない。だからといって、この私が神妙な顔をして書店で料理のレシピ集を買うなんて、ちょいとした羞恥系の罰ゲームだ(←自意識過剰です)。必要もないのに、思わず「上」で領収書をもらってしまったりしそうである。最近はニンテンドーDSだかなんかで、便利な「お料理ナビ」なんてのもあるとは聞くけれど。
そんなレシピ知らずの私はときどき、自分が読んだ小説の中に登場した料理や食事で、美味しそうだと思ったものを作ることがある。もちろん難しい料理は作れないよ。作れないんでカンタンなものに限られてくるのだが、作るもののヒントにはなるわけだ。村上春樹の作品なんかはよく料理が出てくるので参考になる(実際、参考にしているファンも多いと聞く)。たとえば『ノルウェイの森』の中で、緑が「僕」に作った料理のひとつ「細かく切ったたくあんにごまをまぶしたもの」はなかなか美味しかった。まさに読んで字のごとくの作り方なので、私だろうが性格破綻者だろうか誰にでもできるけれど、シンプルさとごまの香りがナイスだった(私は黒ごまで作ったが、多分白ごまでも美味しいと思う)。また、コンビーフという食材は我が家の食卓には一度も登場したことがなかったのだが(両親ともにあまり好きでないため)、曽野綾子の『太郎物語 −高校篇−』*1の中に出てきたコンビーフハッシュは自分で朝食に作ってみて、「食べたことなかったけど、コンビーフって意外とうまいのな」と思うきっかけになった。以来、いまでもときどき作っている。これもおそろしくカンタンだが、作中で上手な作り方のこつが書かれているので参考になった。また、同じく『太郎物語 −大学篇−』で「ビーフシチューを丼飯にぶちまけて食べる」というくだりを読んでからというもの、私の中では「ビーフシチューにご飯」が鉄板のデフォルトになっている。
昔、一人暮らしだった頃は休みの日などに日がな一日本を読み、夕方くらいになったら読んだ本の中で美味しそうだったものを作るべく買い物に行き、一人で作って一人で食べ、食べ終わったらまた本の続きを酒でも飲みながら読み、眠くなったら寝る、なんていうことをたまにやった。何も生まないし活動的ではないけれど、それなりに楽しい休日の過ごし方だった。ふらふらと買い出しに行った、三田の慶應大学隣のスーパーが懐かしい。
皆さんは、自分が読んだ(料理本以外の)本やマンガの中に出てきた料理を実際に作ってみたことはありますか? 美味しかったものがあったら教えてくださるとうれしいです。もちろんこの際、『美味しんぼ』や『クッキングパパ』は「料理本」と見なします。




池波正太郎とかにも美味しそうなものが出てくる。人気blogランキング

*1:『太郎物語』の主人公・山本太郎のモデルになったのは多分この方です。http://www.sapientia.ac.jp/eichi/university/teacher/Ditel/edit/428c32be96f17.html