レモンの種が泣くまで

「そんなもの、持ってたって意味ないですよ」
「そうかな?」
「当たり前じゃないですか、そんなカラカラに干からびたレモン、いくら絞ったって、もう一滴も出やしませんよ」
「そう言ったのかい?」
「え?」
「このレモンが自分でそう言ったのかい、私はカラカラに干からびていて、もう一滴も出ません、って」
「あんた、気は確かですか。干からびたレモンが口をきくわけありませんよ」
「じゃあ、まだ出ないと決まったわけじゃない」
「…。なら好きになさればいいですけどね。しかし、レモンの汁なんか絞って一体どうする気なんですか」
「手紙を書くんだ」
「は?」
「この汁で、手紙を書くんだよ」
「誰にですか?」
「レモンにさ」




中途半端に出るより、干からびてくれていたほうがいいのに。人気blogランキング