人を見る目

この日記をよく読んでくださっている方なら、私がしつこいくらい何度も話題にしているのですっかりご存知のことと思うが、私は会社勤めの期間の大半を、人事部で過ごした。そんなわけでまぁ、社内の人事上の秘密や社員の個人情報に属することを知り得る立場にあったわけである。もちろん、職務上知り得た人事上の秘密や個人情報を悪用したなんてことは神に誓ってないけれども。
さてあるとき、過去の新入社員採用のデータを洗う必要があり、資料を引っ張り出して調べていた。その中には、私が新入社員として採用された際の資料もあったりするわけである。たとえばエントリーシート、たとえば筆記試験の得点などといったものだ。
すると、私の若かりし頃の面接カードが出てきた。内容的には自分の履歴や志望動機、自己PRなどが書かれたもので、面接官が面接の際の参考にするものである。(いまよりは多少)初々しい、ちょっと緊張した面持ちの顔写真が貼られたそれを見て、私はちょっと気恥ずかしくなった。書かれている自己PRの内容のぎこちなさ、堅苦しさにもやはり気恥ずかしくなったが、面接というのはそういうものである。雇ってもらうために、多少は自分をよく見せなくてはならない。もっと乱暴に言ってしまえば、面接官を騙す必要がある。言わば騙し合いなのである。学生は、自分を偽り飾って、少しでもよく見せようとする。面接官はそれを見抜き、見破り、本当に有為な人材を取らなくてはならない。自分を押し込んでしまえば学生の勝ち、ボンクラを落として使える奴を採用できれば会社の勝ち、なのである。そういう意味では、私はかつての会社に「圧勝」したといえよう。
さて、面接カードには、当時の面接官、すなわち現在の私の人事部での上司らのコメントやメモ書き、学生にした質問や学生の印象などが書き付けてある。ちっちゃくて薄い鉛筆の字で読みにくいのだが、私のカードにもいくつか書き込みがあった。その中にこんな二文字を見つけた。
「純朴」
あははははははははははははははは。「純朴」て。言うにこと欠いて「純朴」てキミ。思わず吹いてしまったじゃないか。一人で残業しているときでよかった。しかしなんたるちや。今まで生まれてこのかた、一度も人から「純朴」と評価されたことなんてないよ。いまに始まったことではないが、あの会社の「人を見る目のなさ」もたいがいである。
結局、その「純朴」だったはずの私は5年で会社を去り、「圧勝」どころか「完勝」したのであった。マル。




それはそれとして、近々とある面接を受ける予定。この年で。人気blogランキング