今日買った本

武藤康史『旧制中学入試問題集』。
旧制中学入試問題集 (ちくま文庫)
これは面白い。まだ読み始めたばっかなんだけど。明治の後半から昭和初期までの、全国の旧制中学や高等女学校、陸軍幼年学校などの入試問題を、国語、算術、歴史・地理、理科といった科目ごとに、年代順に紹介して解説も付した労作。また、本の後半には「あの人が受けた入試問題」として、宮澤賢治岸信介宮本百合子丸山眞男などといった人が受験した中学校・年度の問題を紹介してある。
全部読んだらまたレビュー的なものを書きたいと思うんだけど、ちょっと読んで驚いたのは「この問題を十二、三歳の生徒が解くの?」ということ。もう昨今のゆとりだなんだなんていう議論なんて、風呂ん中で屁こいたような寝ぼけた話に思えてくる。ちょっとだけ、同書内から紹介。

一、次の文によみがなを記し、全文を解釈せよ。
1.婦人は庖厨を治むるを習ふべし
2.畢竟陸地の開墾も水陸の漁猟も小規模なり
3.寒夜に衣衾なくて露宿す

(後略)

神奈川県立高等女学校(現・神奈川県立横浜平沼高校)の明治37年の国語の問題。これを、いまでいう小学校6年から中学2年ぐらいの子が解くんだって。高校一種国語科教員免許を保持せる一斗ですが、恥ずかしながら全問正解はムリでした。そりゃまあ、当時といまの教育内容の違いを丸無視して考えるわけにはいかないにしても、こんな水準の知識や教養をこのぐらいの年齢から要求された人が、さらに学問を修めて政治や経済、文学などといったジャンルに活躍したのが戦前という時代だったわけでしょ? そりゃ勝てんわ。こういう時代に「秀才」の誉れ高かった人、たとえば芥川龍之介なんて、どんだけ頭がよかったのかと思いますよ。
最後に、算術からも1問紹介しておきましょう。大正2年の兵庫県立神戸高等女学校(現・兵庫県立神戸高校)より。

問.定価1磅10志ノ書籍ヲ定価ノ二割引ニテ英国ヨリ買ヒ郵便料2志ヲ払ヘバ費用総計如何。但1磅ハ20志ニシテ9.87円ニ換算セヨ。

イギリスの通貨単位のポンドを「磅」、シリングを「志」と書くなんて初めて知ったよ。さすが港町・神戸だけあって、当時から外国の通貨も、入試問題に出るほど身近だったんですね。うーん、ハイカラ。




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