居酒屋探訪「大はし」

昨日は月曜日だったので、博物館にも美術館にも振られた一斗。しかし、せっかく上野まで来たんだから、ということでちょこっと足を伸ばし、前々から行ってみたかった北千住の居酒屋の名店「大はし」に行くことにしました。
徒歩でね。
日比谷線だと上野→入谷→三ノ輪→南千住→北千住の4駅なんで、そう大したこともあるまい、とたかをくくって歩き出したのですが、日光街道をひたすら北上、という間違えようのない道だったのにざっと1時間半ぐらいはかかりました(でも途中、墨堤通りに入ってしまうというミスを犯し、ちょっと時間をロスしたけれど)。歩くのはキライではないし、遅いほうでもないのですが(その代わり走るのは絶望的に遅い。多分歩いたほうが早い(え?))、けっこうかかっちゃいましたね。健脚のmykissmykissさんならもっと早く行けるんじゃないかな、と思います。
途中、千住大橋を渡りました。芭蕉の『おくのほそ道』の出発の場面で知られる千住大橋ですよ。たもとには、陸軍大将にして首相・林銑十郎の筆になる「八紘一宇」がデカデカと書かれた碑が。なんでここで林銑十郎なんでしょうか。「千住」と「銑十郎」がかかっているのかな。
そんなこんなで汗をかきつつ歩き、ちょっと体が冷えてきた頃、北千住に到着です。地図を頼りに商店街から一本路地に入ると、2分ほど歩いたところに目指す「大はし」はありました。
http://tokyo.gourmet.livedoor.com/restaurant/info/4208.html
http://hw001.gate01.com/izakayajunky/oohasi_autumn.htm
実はこの店、中島らもの『せんべろ探偵が行く』せんべろ探偵が行くに登場したのを読んで以来、らもフリークとしては一度行きたいと思っていたお店。16時半というステキな時間にOPENなれど、私が着いたのは16時45分ごろ。引き戸を開けてのれんをくぐると、おじさんが元気よく声をかけてくれ、座るべき席を指し示す。「コの字」型というよりは「J字」型のカウンターは、こんな時間だというのにもう八分の入り。スーツ姿のリーマン風もいれば、職業不詳っぽいおっさん(まぁ私もその一人だが)もいてなかなか賑やかです。
とりあえず、大瓶(500円)と白子ポン酢(480円)をオーダー。お通し(無料)はなんだろう、だしがらのカツオにしょう油をかけたっぽいもの? まぁこれで金取ったらいくら温厚な私でも怒るよ。ここまで歩いて来てちょっと疲れた体にビールを補給。そして、箸でひと口白子を嘗め、口の中でムニュムニュ味わう。
おおっ、おいしい。この「ギリギリの生臭み」が絶妙。風味は白子っぽい濃厚さがありつつ、それに加え「ああ、魚の一部を食べてるんだな」と思わせてくれる、出しゃばらない程度の海の香りがステキ。むろん、ここよりおいしい白子を出す店なんて、相応の金を払えばいくらでもあるけど、この値段、この佇まい、この存在感のお店で、こんな品物が出てくるというのはなんかしみじみとうれしい。いい店の予感。
ビールも半分がた空けたところで、名物「牛にこみ」(320円)をオーダー。カウンターの上には「名物にうまいものあり北千住 牛のにこみで渡る大橋」という歌がかかっている(『せんべろ探偵』によると、あの伊藤晴雨の作なんだとか)。その歌を眺めつつ待っていると、おじさんが持ってきてくれる。
あれ? 想像してたのと違うよ? 汁が少ないし、こんにゃくも豆腐も葱も入ってないうえに、もつ的なものが見当たらないよ? そう、ここの「牛にこみ」は正真正銘の「牛肉」の煮込みなのだ。もつじゃないんだぜ、肉だぜ肉。たぶん、すじ肉に近い部分のすね肉かなんかなんではないかと見たが、箸でほぐせば細かくボロボロになるまで煮込んである。これぞ「大はし」名物「牛にこみ」でござる。
うーん、これもうまい。初めはその牛くささが鼻についたけれどちびちび食べていくと癖になってしまう。私は大食らいなので、何かをちびちびつまんでアテにするということはほとんどしないのだけれど、この甘辛い味と牛肉の香りは病み付きになりそう。ひと皿で長く持つのもよい。私の中で、「ちびちびアテ・オブ・ザ・イヤー'07」を勝手に授賞することにする。これで320円とはニクいぜ。
そろそろ腰を上げようかなと思ったところで、一斗レーダーにあるおしながきがピコーン! と反応した。おいおい、この「なまずの唐揚げ」(550円)ってのは何なんだよぅ。こんなものを隠しておって、わしがなまず好きであることを知っての狼藉か! このうつけが! となぜか時代劇風に食欲が湧き、脊髄反射でオーダー。いつでもどこでも気軽に食べられる、というわけではないけれど、私は実はなまずが好きなのである。 まぁ天ぷらぐらいでしか食したことはないけれど、あの淡白な味わいと、かすかな泥臭さはわかる人にはわかる美味しさだ。どじょうでも悪くないんだけれど、あの白身の肉の歯ごたえはやっぱりなまずですよ。
待つことしばし。揚げたてアツアツのがやってきた。ああー、こういう片栗粉が白く粉ふいちゃってる唐揚げ、超好きなんよ私。この店のアテでは550円と高いほうだが、女性ならひと口ではちょっとキツイかな? というほどの大きさのが4切れ。そう思うと高くない。塩で食べてね、というおじさんの指示があったので素直に従い、塩をパラリと振って食す。あちっ、ハフハフ。
うわっ、やっべぇ!(←若者的用法) 旨い、コレ旨いよ! ベタな表現だから伝わりづらいと思うけど、口に入れるとまず「サクフワッ」という食感が来る。そいでもって口に広がるじわっとしたなまずの旨み。川魚なんだけど、川魚っぽくないこの感じ。なんだろうな、この風味と香りと歯ごたえは。もう「なまずの味」としかいいようのない味というか、他に喩えようがないというか。「サクフワッ、じわっ」をくり返すこと四度。夢中であっという間に食べてしまう。ひさしぶりに「あーあ、食べ終わっちゃった」という感じ。個人的には、これを食べるためだけでもここに来る価値はあると思った。満足。
てなわけでビールももう一本飲み、しめて会計は2,330円ナリ。噂に違わぬいい店だった。多分また来る。ていうか来よう。今度来たら、気になりつつもお腹いっぱいで食べられなかった「むつの南蛮漬け」も試してみるのだ。むつも好きなんだけど、煮つけじゃなくて「南蛮漬け」っていうのが超魅かれるのだ。誰か一緒に行ってくれる人も募集するのだ。これでいいのだ!





そのあと大阪風串かつの店「天七」にも行って飲んだ。人気blogランキング