明治の食卓

河内一郎『漱石、ジャムを舐める』。
漱石、ジャムを舐める (新潮文庫)
労作。第一部「作品に見る食文化史」では、漱石の作品に登場する食物・食品から明治の食生活や、夏目家の食卓の様子をあぶり出しており面白い。『吾輩は猫である』の中で、苦沙弥先生が舐めていたジャム*1を、当時の生産・輸入状況をひもとくことによって「一斤缶に入った、糖度65度前後、ひと缶60〜70銭の輸入品の苺ジャム」と推定しているのにはうならされた。
第二部の「食文化年表」、第三部の「物価」もすごい。資料としていろいろ使えそうな感じである。
ちなみに著者は学者ではなく、38年間、食品メーカーに勤務するかたわら高校時代から個人的に漱石研究に取り組んでいたという、いわばアマチュア研究者。お仕事とも関係する「食」というテーマで、漱石作品を捉えなおし、本書をものされたそうである。





村上春樹作品に登場する料理・食べ物を集めた本もあったな、そういえば。人気blogランキング

*1:漱石自身も、ジャムを舐めるのが好きだったことはよく知られている。