『大予言』

藤子・F・不二雄のSF短編。ひさしぶりに読み返した。
作品の終盤。エネルギー危機、直下型大地震の危機、核拡散の危機、食糧問題の危機などを報じる新聞記事の切り抜きを手にした予言者・田呂都は、泣き叫ぶ。

ひょうしぬけしたような顔だな やっぱり。それがこわい。
自分たちの滅亡を予言されて。気も狂わないでいられるみんながこわい!
有効な対策もないくせにさわごうともわめこうともしない世界人類がこわい!!

十数年前に読んだときには、あまり印象に残らず読み流してしまった作品だった。しかし、いまは違う。他のどの作品よりも、リアリティとおそろしさを持って、迫ってくる作品だと思う。
『大予言』は、田呂都が孫につぶやくこんなセリフで終わる。

しんちゃん おまえにはもう予知してあげる未来もないんだよ。

「予言者」は、F先生だったのだ。





『大予言』の初出は「SFマガジン」1976年5月号。人気blogランキング