本は意外と適当に書ける

佐藤愛子『今は昔のこんなこと』今は昔のこんなこと (文春新書)
私の中の、「存命だったかどうか、ついうっかり忘れてしまう作家ランキング」で8年連続首位を守っている佐藤愛子であるが、その佐藤愛子が、「居候」や「モダンガール」、「アッパッパ」など、いまは失われてしまったものやこと、概念や風俗などについて書いていくエッセイ。
佐藤愛子も昔は毒舌にキレがあったけれども*1、さすがに寄る年波には勝てないのか、なんか往年の鋭さが摩耗している感じがした。また、「翻って当今は…」みたいに現代を切ってみせるその切れ味も、もはやなまくらである。
では、昔をなぞり鮮やかに描いてみせる回顧の筆は確か、といわれたらそうでもない。「夜這い」の項で堂々と「夜、這っていくから夜這い」などと大ウソを書いている。大部の国語辞典に当たらなくても、そこらへんの辞書にだって書いてあることなのに(なんだか小谷野敦がツイートでツッコミそうな内容だけれど)。
ただ、「夜這いで忍び込む際、玄関の引き戸を開けるとき音が立たないように、敷居に小便を流し込む」って話は面白かったな。かなり昔(たぶん小学生のとき)泥棒の侵入の手口を解説した本を読んだとき、同様の手口が「夜這い式」という名で紹介されていたこととつながったんで。二十数年ぶりに。たぶん、読んだ当時は「夜這い」という言葉の意味もわからなかったはずだけれど。



Q.では、「スイビラ式」とはどんな泥棒の侵入の手口でしょう? 人気blogランキング

*1:『坊主の花かんざし』は面白かった。坊主の花かんざし 1 (集英社文庫)