お彼岸なので

私がこれまで行った有名人のお墓の中から、ひとつご紹介。
4年半ほど前に訪れた、フランツ・カフカの墓。



プラハにあるユダヤ人墓地にあった。プラハ・ホレショヴィツェ駅から地下鉄で15分ほど*1
墓地の係員に「フランツ・カフカの墓はどこですか?」と訊ねると、「案内が出ている」と指を指された。礼を言って歩き出そうとすると、「頭を覆え」というジェスチャーをされた。ユダヤ教では、男性は礼儀として神の前では頭を隠す必要があるらしく、しかし私は帽子を持ってきていない。仕方がないのでパーカーのフードを被っていった。
大きな墓地ではあったが、入口からは2分ほどで辿りつけた。墓の前には、私と同じ目的とおぼしきヨーロッパ系のカップルがいた。彼らがいなくなるのを待って、私は手を合わせ、瞑目した。
カフカは『変身』しか読んだことがないけど、あの不安さとか不条理さは印象に残っている。会社員の時分、ある朝突然、虫になってしまった同僚や先輩を何人か見てきたし、私自身も、虫になりかけたこともあった。カフカが100年も前に喝破したように、現代を生きる我々は、誰もがザムザなのだ。
昼すぎだったが、雲が重そうに垂れ込めていて、薄暗かった。細かい雨が降ってきたので、私は墓地を後にした。



チェコの書店では『海辺のカフカ』の翻訳版が置いてあった。人気blogランキング

*1:ホレショヴィツェ駅に着くなり、怪しげな二人組に声をかけられ、財布をすられかけるというハプニングがあった。一人きりの貧乏旅行だったので、あやうく一文無しになるところだった。