漱石とイルマさん(4)

アルバイトの面接が終わると、私は小田急線に飛び乗って新宿に向かい、そこから総武線で市ヶ谷を目指した。イルマさんがメモで指定した金曜日は、4日前のことだった。私はキャンパスまで走ると、文学部の掲示板前に駆けつけた。もちろん、イルマさんはいなかった。
息を切らせてがっくりとうなだれると、掲示板のいちばん下のほうに、小さな封筒が目立たないように画鋲で留めてあったのに気がついた。そして、さらに目立たないような小さい字で、その封筒には「一斗くんへ」と書いてあった。
私は、ひざまずくようにしてその封筒を掲示板から取った。
封筒に入っていたメモには、一行だけメッセージが書かれていた。
「百年待ったのに、来なかったじゃん。ばか」
4月の新年度を迎え、私は3年生になった。サークルとバイトが忙しくなった私は、授業にほとんど出なくなった。
イルマさんは4年生になった。たまに私が学校に顔を出したときにすれ違うリクルートスーツの女子学生たちの中に、もしかしたらイルマさんがいたかもしれなかったが、もう彼女とキャンパスで会うことはなかった。
「ばか」と書かれていたメモは、なにとはなしに捨てずに取っておいたと思うが、社会人になって引っ越しをしたとき、まぎれてなくしてしまった。
そんなことを、『あまちゃん』を見ていたら、思い出した。入間しおりは画面の中で、アイドルとして歌っていた。サックスは吹いていなかった。




なお、このエントリに書かれていることは、全てまったく、完全なる100パーセントのデタラメである。『あまちゃん』なんて一つも観ていないし、留年しかけていたジャズ研の女の先輩も存在しない。最後まで読んでいただき、本当に申し訳ないと思っている。



まぁ最後まで読んでくださった方なんていないだろうから、いいか。人気blogランキング