味覚の永久歯

私は子供の頃、人並みに食べ物の好き嫌いが多かった。たとえば生ものが食えなかった。寿司も刺身もNG。私の母親は寿司が何よりも好物なのでよく子供の頃から寿司屋に連れて行かれたが(もちろん大した店じゃないですよ)、私が食べられるものといえばエビの、しかもネタだけだった。シャリも何となく食べられなかったのである。今ではそんなことはない。寿司なんかバッチコーイ! である。
ところが比較的すぐ生ものは食えるようになったが、ウニやカニミソなどはその後もしばらく口にできなかった。しかし、いつの頃からか忘れたが、どちらも大好物になってしまった。おかげでもう一つの大好物のビールとともに痛風の発症に怯える日々である。
また、もつ・ホルモンの類も中学生頃まで嫌いだったが、いつ頃からだろう、おそらく酒を嗜むようになってからだと思うが、もはや欠かせないものになってしまった(もっとも、質が悪かったり処理がいい加減なものは今でも食えないが)。
当たり前の話だが、味覚は獲得していくものなのであり、お子ちゃまの時期には食べられるものが自ずと限られてくるのだ。狭いのだ。たとえばミョウガが大好物、などという小学生にはあまりお目にかかったことがない。「何食べたい?」と訊かれて「ホヤ!」と即答する女子中学生もしかりである。単なる個人的な嗜好や好き嫌いを超えたところに、「味覚の永久歯」ともいうべきものが存在する、と私は考えている。たとえばブロッコリーが食えない、という人と秋刀魚のワタが食えない、という人では後者の人は「味覚の永久歯」が生えていない、と私は考える(全くもって私の独断と偏見でしかないのだが)。そんなわけで、私はときどき、他人の好き嫌いに対して心中秘かに「ふっ、『お子ちゃま』め」という判定を下していることがあるのであしからず。もっとも判定を下したところで何をどうする、ということもないけれど。
そんなわけで、皆さんが獲得した「味覚の永久歯」を募集してみます。「昔、これ食えなかったけどいまは好物」というものを教えてくださいませ。
関係ないけど私の周りにいる人間は、私を除いて漏れなくピータンが嫌いだ。家族、彼女、友人、職場、好きという人にお目にかかったことがない。美味しいのにねぇ。


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