『水滴』

沖縄出身の作家・目取真俊芥川賞受賞作。
水滴 (文春文庫)
ある日突然右足が腫れて、そこから水滴があふれ出す老人・徳正。彼の寝室には、足から出る水を飲みに、沖縄戦で戦死した日本兵たちの亡霊が夜な夜な現れるというストーリー。罪と秘密を抱えて戦後五十年を生きてきた徳正の姿を、過去と現在を交錯させながらマジックリアリズム的手法で描いている。同時に、徳正の姿に重ねて戦後の沖縄の抱える矛盾も浮かび上がらせる。作中での登場人物の会話が、生き生きとしたウチナーグチなのも特徴的。
併録されている『オキナワン・ブックレビュー』は、架空の本の書評を並べるという体裁で現代沖縄の問題をアイロニックに描いてみせる作品。正直、よっぽど沖縄に詳しくないとほとんど意味がわからない(私もわからなかった)が、パスティーシュ最盛期の清水義範的な感覚が味わえて、わからないなりに楽しめた。





本名・島袋正。ペンネームの由来が知りたい。人気blogランキング