赤塚不二夫、死去

私は、「セックス」という言葉を、赤塚不二夫の漫画で初めて知った。
もちろん私は、『天才バカボン』も『おそ松くん』も『もーれつア太郎』も『レッツラ☆ゴン』も、リアルタイムで読んだ世代ではない。しかし、「ギャグ漫画家・赤塚不二夫」という名前は、ときどきTVに出る、あの細い目でちょっとろれつの怪しい(たぶん、酒が入っていたのだろう)おじさんという印象とともに、子どものころの私の中にいつしか刻まれていた。
そして、私が初めて読んだ赤塚不二夫の漫画は、『赤塚不二夫の文学散歩』という作品であった。
http://www.amazon.co.jp/%E8%B5%A4%E5%A1%9A%E4%B8%8D%E4%BA%8C%E5%A4%AB%E3%81%AE%E6%96%87%E5%AD%A6%E6%95%A3%E6%AD%A9-%E3%82%AA%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%83%89%E7%89%88-%E3%82%B3%E3%83%9F%E3%83%83%E3%82%AF-%E8%B5%A4%E5%A1%9A-%E4%B8%8D%E4%BA%8C%E5%A4%AB/dp/409001901X
なぜこの本を買ってもらったのかはよくわからない。たぶん、「あ、これがあの赤塚不二夫の作品か」と思ってねだったのだろう。小学1年生ぐらいの頃だった。初版は1984年。子ども向けの漫画ではなかったから、内容に関しては当時の私にはよくわからない部分もあり、なにぶん古い話なので断片的にしか覚えていない。ただ、その作品の中で、私は「セックス」という言葉を初めて知った。
赤塚不二夫の文学散歩』は短編集だったのだが、収録作品のひとつに、パソコンが意思を持ち、買ってくれた男と恋に落ちる、というものがあった。そのパソコンはディスプレイに文字を出すことで男と会話をするのだが、その中で、体は機械だけれど、私は女としての心を持っているから、あなた(買ってくれた男)と結婚もしたいし、セックスもやりたいと思う、といった意味のことを語るくだりがあった。
「…『セックス』ってなんだろう?」
子どもだった私は、語感が「ゼロックス」に似ていたことから、コピーかなんかなのだろうと思った。しかし、「結婚もしたいし、コピーもいっしょに取りたい」では、さすがに脈絡がおかしい。ではなんなのだろう、と思って両親に訊こうと思っ…たのだが、私はなぜか子どものころから少しませていて、また大人の顔色を伺うのが得意な子どもだったのでやめておいた。なんとなく、これは(理由はわからないけれど)訊かないほうがいい言葉であるような気がしたのである。
ともかく私は、「セックス」という言葉を、赤塚不二夫の漫画で初めて知った。その言葉の意味を知るのはもう少し後、それが実際にどんなものであるのかを体験するのはさらにもっと後になるのだが。
ご冥福をお祈りしたい。合掌。





昔、行きつけの居酒屋に、彼に似ている店員がいた。人気blogランキング