『送り火』

送り火 (文春文庫)
重松清の短編集。連作ではなく、それぞれの話は独立しているのだが、すべて「武蔵電鉄」という架空の(しかし、作者自身がかつて住んでいた路線がモデルである)私鉄沿線が舞台となっている*1
彼のモチーフとなっている「現代の『家族』」というテーマは、今回も色濃い。夫が残した古い団地の一室に一人で住む年老いた母親と、その母親に自分の家族との同居を勧める娘を描いた表題作は個人的に白眉。カフェで読んでいたのだけれど、涙が溢れてきて困った。
病気で幼くして亡くなった息子が、DMを送りつけてくる業者の名簿の中で生き続けていく、という『かげぜん』の哀切さも秀逸だった。『ハードラック・ウーマン』は、そのうち『世にも奇妙な物語』でドラマ化されるだろう、とムダ予想。





「『中学入試に出題される作家』No.1」だそうな。人気blogランキング

*1:雑誌初出時のタイトルは『私鉄沿線』であった由。